生きることは食べること。
この物語は生きることと食べること、そして人生の終末期を考えさせられました。
もうすぐ50代を迎えるということもあり、また、昨年は死にまつわる悲しい出来事が多くあった年でもあり、「死生観」に思いめぐらせることがたびたびありました。
そんな中で出会った一冊。実際に読んでみた感想です。
受賞した新井賞って?
「ライオンのおやつ」は第11回新井賞を受賞しましたが、新井賞って、聞きなれないですよね?
この新井賞は、つい7年ほど前に創設されました。
本屋さんで有名な「三省堂書店」の新井さんという店員さんが、
独断と偏見で個人的に「推し」の1冊を選び出すというもの。
2014年から半年に1回、選び出されているそうです。
物語の舞台
この物語はホスピスを舞台にしていますが、私は4年前、はじめてホスピスがどういうものかを知りました。
親せきがそこへ入院したからです。
普通の病院とは違い、ゆったりとした穏やかな時間がそこには流れていたのを覚えています。
「痛みにはふたつある。ひとつは、体の痛み、もうひとつは、心の痛み。
両方を取り除かなければ幸せな最期は訪れない。
ホスピスは、体と心、両方の痛みを和らげるお手伝いをしてくれる場所だった。」
そんなホスピスを舞台にしたこの物語は、死を扱うテーマだけれども、読み終わった後は優しく懐かしい情景が目の奥に広がり、心がゆっくりと満たされる。自分が登場人物になり、体験する感覚。そんな小説です。
死はふつう、そして怖くない。
いつ死がきても、温かい気持ちで満たされて人生の幕引きができるよう、悔いなく人生やり切りたいなぁ…
そんな風に思わせてくれました。
食への思い、記憶とともに
読みながら目を閉じると、瀬戸内の風景がそこにはあって、よく知っているような感覚に陥ります…
レモン島の葡萄畑、手のひらで揉みほぐされたような柔らかい風。
隠れ家ホテルのような優雅な気分にさせてくれる空間・ライオンの家とレモン畑の向こうにどこまでも広がっている海がみえる心地いい部屋と犬の六花。
そして登場する素敵なおやつ、食べものの数々。
蘇(ミルクを煮詰めたもの)
小豆粥
台湾菓子の豆花(とうふぁ)
レモネード
モルヒネワイン
ワインとチョコレートブラウニー
カヌレ
いいだこのおでん
十六穀米
胡麻豆腐
アップルパイにアイスクリームを添えたもの
バニラアイスにココナツミルクとヨーグルト。アーモンドスライスをかける
ミルクレープ
レーズンサンド
めちゃめちゃおいしそうですよね!!!
まだまだ素敵な食べものが登場します。
食べものの言葉って、なんだかクラっときます、一瞬で魅了されます。
その言葉を読んだだけで思い出す自分だけのエピソード、匂い、舌の記憶…
いろんな思いを引き出す力があるような気がします。
いつか、子供たちに伝えたいこと
生きる、生き抜くこと。
子供達には、生まれてきたからには、きっちり生き抜いて、いろんなことあるけどまずは楽しんでほしいなぁと、思います。
その手助けができれば、親として本望ですね。
いい言葉がこの本にはたくさんあったので、今が辛い人たちにも届けられたら幸せです(^-^)
1.一日、一日を、ちゃんと生きること。
2.人生には何回でもおかわりしていいこと、そうでないことがある
3.人生というのは、つくづく、一本のろうそくに似ていると思います。
ろうそく自身は自分で火をつけられないし、自ら火を消すこともできません。一度火が灯ったら、自然の流れに逆らわず、燃え尽きて消えるのを待つしかないんです。時には大きな力が作用していきなり火が消されてしまうこともあるでしょう。
4.生きることは、誰かの光になること。
「ライオンのおやつ」は、近く、ドラマにもなるそうなので、そちらも楽しみです。
※2021年6月27日(日)より、NHKプレミアムドラマで放映予定です!!!